神通力とは不可能なことを成し遂げる特殊な能力のことです。神に通ずる力と言われるように仏様や菩薩が持っている超人的な力とされています。神通力は超能力と混同されがちですが、厳密には違っています。
神通力は人間の潜在能力を限界にまで引き出した能力のことです。通常人間の潜在能力はほとんど眠ったままなので、それを限界まで引き出すことで超人的な能力を身に付けます。
神通力はあくまで人間的な能力であり、人間にはそれだけの可能性が秘められているということになります。
神通力は能力の総称であり、神通力の中からさらにいくつかの能力に別れます。六通という6つの能力が最も一般的であり、仏様や菩薩などに具わっている力もこの六通になります。
神足通は自分が行きたいと望んだ場所に何の妨げもなくいくことができる移動能力です。ものすごいスピードで走ることが出来たり、空中浮遊で自在に空を駆けることができるともされています。
また一説ではテレポーテーションのように瞬間移動も可能とされています。神の足を持って、自分が望む場所にいつでも簡単に行くことができるのがこの能力です。
天眼通は自分や他人の未来を見ることができる未来予知能力です。未来を見ることができますが、あくまで見るだけなので、この能力だけでは未来を変えることはできません。また能力者によってどれぐらい先のことまで見通せるかも変わります。
人間だと1年から長くても10年先までしか見通せないとされていますが、仏様や菩薩は遥か先の未来まで見通すことができると言われています。未来予知することで、自分の行動を変えよりよい未来を歩むことができると言われています。
天耳通はあらゆる音を聞き取る能力です。鍛えれば数キロ離れた場所の小さな音でも聞き取ることができると言われています。また一説ではわずかな音を聞き取るだけではなく、動物の声も聞き取ることができるとされています。
万物の声を聞くことで世の中を知り、自分を知るための能力とされています。
他心通は相手の心を読み取る能力です。覚りという妖怪が相手の心を読むのもこれと同じ力とされています。他心通は相手の心を読み取り、本当望みを知りそれに報いるための力です。そのため強い集中力が必要とされています。
また人間の心ほど複雑なものはなく、自分ではなく他人のそれを読み取るというのはかなり難しいことであると言われています。そのためこの能力が単体で具わることはまずなく、何者にも邪魔されない澄んだ心の持ち主だけが体得できると言われています。
宿命通は自分や他人の過去を遡って見つめることのできる能力です。人間は輪廻転生によって何度も生まれ変わっており、そのサイクルを見通す力でもあります。
宿命通は今世の過去だけではなく、自分や他人の前世、さらには前前世なども見通すことができます。鍛えるほどに遠くの過去まで、明確に見通すことができるとされています。
過去の行いを見つめることで今世の振る舞いを見直す能力と考えられています。
漏尽通は煩悩がなくなり悟りを開いたときに開花する能力とされています。この世に対する一切の迷いや悩みがなくなり、輪廻転生のサイクルからの解脱を可能とする人外の能力です。
悟りを開くことで世の中の全ての道理を知ることができます。人間として生まれ、限界にまで力を高めて神に昇華する極めて体得することが難しい力だと言われています。
神通力を体得するには様々な方法があるとされています。基本的には厳しい修行を乗り越えてその力を得るものですが、修行以外にも裏技的にその力を得る方法もあるようです。
神通力を体得するためにはあらゆる煩悩を捨てなければなりません。俗世から自分の存在を断ち切り、全ての欲を捨てることから修行は始まります。そのため山奥や秘境など人目につかない場所で修行をすることがほとんどです。
座禅や精神統一、呼吸法などを通じて欲を捨て去ります。神通力を取得したいという気持ちも雑念であり、これを取り払う必要があります。食欲、物欲、性欲などあらゆる欲から解放されて初めて神通力は体得できるとされています。
薬の調合も修行の一部にはなりますが、神通力を体得するための手段です。ここで調合される薬は不老不死の薬です。自らの気を練り、自然の力を取り入れて薬を調合していくと言われています。
薬が完成し、不老不死になった瞬間に全ての神通力が具わるのではなく、そこから長い時間をかけてゆっくりと体得していくとされています。不老不死によって高いエネルギーを得ることで体得できる能力もありますが、煩悩がある以上全ての能力ではありません。
自ら進んで欲を捨てようとするのではなく、不老不死で長く生きた結果、煩悩がなくなっていきます。その結果として知らないうちに神通力が身についているという場合が多いようです。
神通力を体得するためには厳しい修行を乗り越える、あるいは薬の調合によって呪術的に神通力を手に入れるという他に生まれながらに体得しているというものがあります。生まれながらに神通力を体得していることを生得と言います
神通力を生得できるかは前世によって決定すると言われています。また全ての能力を持っているとは限らず、生まれてすぐでは神通力が不完全な場合もあります。
天狗と言えば、鼻の長い妖怪として知られていますが、天狗は強い神通力を使うことができたとされています。天狗は伝承などにも広く登場し、妖怪だけではなく鬼であったり、神様であるとされている場合もあります。
天狗は神通力が使えると言われていますが、その中でも特に強い神通力を持っていたのが大天狗と烏天狗です。大天狗は修行僧や修験者の格好をしており、力の強い僧侶や修験者が死後天狗になるため強い神通力を持っていたとされています。
また烏天狗の場合は剣術などにも優れていることから破戒僧などが死後天狗になったとも考えられています。源義経が牛若丸であった幼少期に剣術を教えたのも烏天狗とされています。
天狗は人間の死後の姿であるとされているため、人間とも神通力とも深い関係があると考えられます。
般若心経と神通力には深い関係があります。般若心経は短いお経ですが、もとは菩薩が弟子に自分の存在の真実についての講釈をしたものです。
存在とはどういうものなのか、悟りを開くとはどういうことなのかということがそこには記されており、それを正しく理解することで神通力を体得することに繋がるとされています。
般若心経は神通力に繋がるものがあり、それを繰り返し唱えることでも神通力により近づくことができるとされています。菩薩の教えを何万回と唱え、真にそれを理解することが神通力体得の近道になります。
また般若心経は神通力を高めるものとも言われています。神通力にも力の差はあり、仏様や菩薩が扱えるものと人間の使える力では天と地ほどの差があると言われています。
神通力を手に入れた後もその力を伸ばす修行として繰り返し般若心経は唱えられていたようです。
いかがでしたでしょうか。神通力はどんなことでも自在に行える特殊な能力ですが、神の力ではなく人間の力です。人間の能力は潜在能力として眠っているものがほとんどの割合を占めています。神通力はその眠っている能力を最大限に引き出すことで使えるようになります。
神通力を体得するためには厳しい修行を重ね、神通力を体得したいという欲さえ捨てる必要があります。普通の人間にはなかなか難しいことですが、それでも座禅を組んだり、精神統一をすることは決して無駄にはなりません。忙しい日々に忙殺されているようなら心の落ち着きを取り戻すために精神を集中させてみると、より世界がクリアに見えるようになるでしょう。
元記事を読む URANARU